アンケートに書かれていた感想で
全員が同じ事を書いていた。
私、僕は彼の事をよく知らない。
最初は医師ではなく看護師と思っていた。
彼は無愛想で非常に若かったから。
他の国への研修に行かされたときは
この病院から捨てられたと思っていた。
その研修に行くのは未来の無い医師が
行くものと聞いていたが、実態は違っていて
エリートコースだったという事を後から知った。
その時悔しい思いをした。なんで彼なんだ?
私、僕の方が彼より優秀なはずだと思ってた。
上位医長からそのエリートコースは諸刃で
医師を諦めて辞めていく者も多いと聞いた。
それを聞いた時に自分には無理だと悟った。
彼が戻ってきた時、挨拶をしようと思ったけど
できなかった。彼が大きく見えた。その時・・・
悔しかったのかなんなのかはわからない。
彼には負けないと思っていたら・・・
彼は上位医長に任命されていた。驚いた。
だけど彼が配属されたのは医師の墓場の
部署だった。彼は上位医長を与えられたけど
配属されたら終わりの部署に配属された。
これは名前だけの役職を与えられたと
院内では話題になっていて安心したんだ。
そこで彼のいい噂は聞かなかった。
患者を多く死なせている。病名は間違う。
移民者達からは恨まれて生きている。
休みもなくやる気のないスタッフの集まりで
実力も知識も弱い部署。優秀な部下も
いない部署。時間の問題で辞めると思ってた。
しかし彼は辞める事はなくいつもと変わらない
様子で院内でいた。
不思議だった。本当に。
もしこの立場が自分だったら・・・
彼みたいにできるか?と考えた時にゾッとした。
ある時・・・部署をそっと除いた時があった。
そこではスタッフも必死で働いている姿を見た。
要領はもちろんいいとは言えない。
迅速に用意するのであれば改良点は多い。
手術が終わった瀬戸医師がまだすぐに手術に
入っている様子も見かけた。瀬戸医師は感謝
だけをスタッフにのべていました。
スタッフはもっと上手くできるように
頑張ろうとしていました。
その姿を見た時に・・・自分にはできない。
と実感しました。
彼がなぜあそこまでストイックに向き合って
人生削ってやっているのかはわかりません。
彼は何か普通の医師とは違う気がします。
できないことと向き合っているような・・・
そんな彼が准教授になると言われても
あまり驚きはしません。
おそらく、彼を知らない人が良くは思わない
と思います。
私、僕はやっと医師免許を取得しました。
落ちた人はまた来年頑張っていきます。
これから頑張っていきますが、彼とは比較を
しないようにやっていこうと思っています。
医師を諦めたくなりますから。
彼は違います。
彼を評価できる人が私達の指導医であれば
その判断は正当な判断だと思います。
と書かれていた。
院長「これが君への感想だったんだ」
瀬戸「ろくに話した事もないけどなぁ」
院長「見ていたんだよ。彼らは。
彼らは君の努力なんて知らないのにね」
瀬戸「はぁ・・・。わかりました。それでは
准教授任命をお受けします」
院長「では任命します。賛同者は拍手を
お願いします」
パチパチパチパチ
拍手をもって任命された。
そして俺は准教授に任命された。
翌日には辞令が出て発表された。
それを見たスタッフに色々と聞かれた。
スタッフ「おめでとうございます。
すごいですね。准教授なんて」
瀬戸「断ったけど断らせてくれなかった。
部署異動でもなかったし結局任命された。
任命されても何するか全然わかんねーけどな」
スタッフ「瀬戸医師の昇格。お祝いしましょう」
瀬戸「そんなんいらんよ。いちいちせんでいい」
スタッフ「いいや。します。」
病院内でスタッフは色々とお祝いをしてくれた。
ただ普通に飲食して話をしていただけだけど
そういう雰囲気もこれまではなかったから。
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