第1524話 たたき上げ

2025年10月31日

第53部-瀬戸の過去-

t f B! P L
それから数日後・・・
病院の外で陳式太極拳をしていた。

トンッ・・・タンッ・・・ビュッ・・・
パンッ・・・パシッ・・・

瀬戸「・・・ふう。少し重いか」

寝不足やバランスの悪い生活で
動きとイメージに乖離があった。

こういう時は調子が悪い。
休まないといけないが休めない状況
がもう1年半は続いていた。

太極拳で心身を整えてたが
さすがに体は限界がきていた。

??「Mr.瀬戸。少しいいか?」

瀬戸「あん?どうしましたか?」

話かけてきたのはトーマス医師。
50才のドイツ人相手の上位医長で
病院の権威者だった。

少し移動してベンチへ座った。
コーヒーを奢ってくれた。

瀬戸「珍しいですね。あなたから
話しかけてくるなんて」

トーマス「君に興味があってね。
あの部署で普通に1年以上もっている
医師を初めて見たからね。それに少しづつ
部署内も変わってきているそうじゃないか。
君は研修で唯一高評価されていたから
ずっと気にはなっていたんだ」

瀬戸「それは光栄ですね」

俺はただ建前を述べていた。
トーマス医師は何人ものエリート研修生に
指導もしているし育ててきている人だったから。

瀬戸「そういえば。同期っぽいエリートが
いましたが順調に医師になってますか?」

トーマス「まぁ普通だな。君の前で順調と
言える研修生はいないだろう」

瀬戸「まさか。俺はただのたたき上げ。
みんなは頭が良くて勉強もしてきて
医師になろうとしているんですから。
元々スタートラインが違うんですよ」

トーマス「違うだろう。君の大学時代の
ことは調べた。そして君の事が怖くなった。
君は最短で医師になれる道を選んでる。
医学生は特殊だ。普通の大学とは違い
4年では終わらない。そこから医師免許の
取得でインターンで勉強してなる。最低でも
8年はかかるのが普通の最短ルートだ。
でも君は・・・アメリカで4年。普通なら
そこから最短でも2年が普通の最短。
しかし君は在学中に試験を終わらせている。
そういう異能な生徒は稀にいる。私も君ほど
の最短ルートではなかったがそうだったから。
それを知ったのは最近だがね」

瀬戸「忙しいのにわざわざ俺を調べる時間
はいらないんじゃないですか?もっと優秀な
研修医に時間使ってあげて下さいよ」

トーマス「ははっ。君はやはり頭もいいね。
おっと。そろそろ時間みたいだ」

遠くで研修医がトーマス医師を探していた。

トーマス「Mr.瀬戸。私は君に敬意を払う。
病院内で困った事があったら言ってくれ。
そして・・・申し訳ないが・・・私に何か
あった時は助けてくれ」

瀬戸「・・・わかりました。何も無いことを
祈っています」

俺じゃなくてもいいだろうと思ったが
わざわざ言った恥をかかせる気はなかった。

医師が 私に何かあった時は助けてくれ 
というのは医師が相手を認めた時であり
全面的に任せると言った時に言う事だった。

上位医師がまだ25の俺に言うのは
本来無いことだったし外国人の俺に言う
のは相当なプライドがあったと思っていた。

瀬戸「はぁ・・・面倒やなぁ。目立つような
事はしてへんのになぁ・・・」

医局内では部署内以外の局員に挨拶も
せず話もせずにしていたので俺の印象は
悪かった。正直そんな時間も無いほど
忙しかったので他のスタッフも印象悪かった。

それから数か月後に・・・
医局内の協議会に呼ばれることになった。

瀬戸「なんか呼ばれてるわ。これって
いかないとあかんのかな?」

スタッフ「もしかして・・・瀬戸医師は
ここの部署外れるんじゃ・・・」

瀬戸「それは無いやろ。俺は他の部署に
歓迎されてへんし嫌われてるしなー」

スタッフ「でも・・・協議会に呼ばれるって
僕らには無いことですし。やっぱり」

スタッフの間で暗い雰囲気が出てた。

瀬戸「おいおい。無いとは思うけど仮に
俺がこの部署からどっか行った方が皆は
今までよりやりやすくなるやろ?」

俺が一番年下で命令系統だしてた。
常識的に面白くなかったと思う。

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