瀬戸さんは話を続ける。
イギリスは政府が運営しているNHSって
いうのがあってそこへ派遣された。
イギリスは原則医療費が無料でな。
ただしイギリス国籍や
長期ビザや永住権を持っている人。
それ以外の人は・・・
残酷だけどな。
医療費が無料ってことで患者はすぐにくる。
結果、緊急の手術でも待たせることもある。
そこは課題だったな。
俺は研修扱いだったけど
医師がオペで足りない時は勝手にやってた。
めちゃくちゃ怒られたけどな(笑)
さすがに目の前に医師である俺がいて
助けて下さいってすがまれたらな・・・
許可とかどうかって問題じゃなかった。
イギリスの医師免許も無いし国際問題に
なりそうだったけど。アメリカ、カナダ、フランス、
ドイツ、イギリスの先生が名医だったからか
その先生達が肯定してくれてな。
病院側が折れたわ
それ以来は病院内で変な目で見られてな。
言うことを聞かない危険な奴がいるって噂に
されて偏見の目で見られてた。
それでもその助かった患者は後日家族で
感謝に来られ俺を神様のように崇めだしてた。
話を聞いてたら・・・医療差別があった。
これはどこの国でもあるがこの頃の俺は
まだ知らなくて。見えない医療の優先が
あることを知って・・・色々考えだした・・・
医療差別が無くなることはないだろう。
だけど医師次第でほんの少しでも改善
することはできるだろう。
そういう事を知ったのがイギリスだった。
そして最後にベトナムに行った。
医療環境が整っていない地域での
難病と向き合ったのがここだった。
絶対的に医師は少なく食べ物も
潤っていない。物資も少ない環境。
普通の医師は耐えられない環境と言われてた。
俺はここで全てやってきた事と経験値を
吐き出してやるんだろうなって思った。
麻酔のない環境での手術に痛みで
暴れだす人間。夜は痛みで寝れない人間。
薬も足りない。物資もこない。
そんな状況で働き続けてて長く従事している
医師と色々話をしていってた。
環境が整ってないとなんもできない医師が
ほとんど。こういう状況での医療はさじを投げる。
そういう事を先生は言っていた。
その先生は医師としてははみだし者だったらしい。
先生は俺に質問してきたよ。
「なんでお前は医師になった?」って
研修に来た医師みんなに聞いてるらしいけどな。
「不甲斐にも神様に祈るしかできなかった」って言った。
驚いてたよ。みんなもっときれいごとを言ってたけど
そんな答えは初めてだ。って。
「命を救いたい」
「安定してるから」
「親が医者だから」
たまに「お金持ちになりたい」ってのがいたらしい。
全員に「理由はどうでもいいが
中途半端な医師になってしまうなよ。
間違ってはいけない職業が医者とバーテンダーだ」
って忠告してるらしかった。
そんな俺には何も言ってくれなかった。
あっという間に1年が経過して
ドイツへ戻ることになった。
最初はドイツへ戻ることを拒否した。
俺みたいなのはこういった環境で
医師として働いていこうって思ってな。
人手が足りないだろうから先生も賛同
してくれると思ったんだけどな。
先生は「お前は戻れ。こんな所で
終えていいレベルじゃない」って言われて
先生に挨拶をして結局一旦は
ドイツへ戻ることになった。
色々と研修で廻ったことで学んだ。
各国によって医療も違った。
瀬戸「・・・」
この時の俺はドイツの病院に戻ったら
すぐに去ろうと考えていた。
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